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【AFT講義レポート】『20、40、60、この数字って何 !?「無印良品」マーケティング方程式』講師:奥谷孝司(株式会社良品計画・web事業部 部長)

MARCH 3, 2015 3:08 PM / CATEGORY:AFT講義レポート

2月中旬、雨という天候にも関わらず 3331 Arts Chiyodaで行われた
「無印良品」レクチャーでは、多くのお客様にお越しいただきました!


日常的に人が立ち寄り、モノを買うという当たり前の仕掛けをどのように組み立て、
どのように展開しているのか、良品計画のweb事業部 部長の奥谷孝司さんを講師にお招きし、
ARTS FIELD TOKYOでは初となる『デジタルマーケティング』についての
講義となりました!

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▲3331 Arts Chiyoda 1Fコミュニティスペースで行われた『ARTS FIELD TOKYO』


" 顧客時間 " を考える


web事業部に入られたとき、奥谷さんは、商品が「何に・どのように」使われているかを
自分たちが知らないのは今の時代では許されないと感じ、自分自身このプロセス全部を
見ていく必要があると思われたそうです。
web事業部でwebの仕組み(特にネットの仕組み)を理解することで、
ますます「顧客時間の重要性を感じた」と話されます。

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▲無印良品のデジタルマーケティングについてレクチャーをする奥谷さん


・ソーシャルメディアで繋がる
・お買い物する
・MUJI passportで繋がる

これら全てが無印良品の既存のお客様。ここでの関係を築けたお客様とネットで繋がり、
その後いかにお客様の時間の中でコミュニケーションしてもらえるか、ということが
ネットや店舗関係なく重要になってきているデジタル社会を根底に、奥谷さんは話されました。


いかに「デジタルな刺激を受けて、リアルに足を運ぶ」か。
私たちは、"お客様に時間を使ってもらえる存在 " になっていかなければならない。


「誰が」「何を」買ったかが分かるようにった、オムニチャネル時代。
無印良品では、商品について「どうでしたか?」と質問を投げかけると、約10万人の人が
そのアンケートに応えてくれるそうですが、そもそも、その関係性が何によって築けたのか?
と探ってみると、それは「ソーシャルメディア」とのコトでした。
さらに振り返ると、ソーシャルメディアが普及する以前から存在していた「くらしの良品研究所」での
お客様との繋がりが、無印良品マーケティングの機軸として土台がありました。
この機軸があることで、コミュニケーションの形がデジタルに変わっても、お客様との繋がりを
今も尚、築きつづけているのだと思います。

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テンポよくお話しされる奥谷さんのレクチャーに
みなさん聞き入りながらも、真剣にメモをとる姿がありました。


理想のマーケティングを考え、お客様の視点に立ち返る


「大勢のお客様が1回ずつご購入されるよりも、既存のお客様に何度も求められる形が
とても理想的なことだと思います。そのようなマーケティングを目指していきたい」
と話される奥谷さん。「誰が」軸を持てば、さらにその人たちとコミュニケーションができます。
そういうデジタルマーケティングがしたいと思ってつくられたのが『MUJI passport』でした。

『MUJI passport』を導入した理由は、社内で「ネットとリアルの融合」を
求められたことが切っ掛けとなったそうです。さらに奥谷さんは話されます。

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▲自身が経験して感じられたコトをもとに、話を展開していく奥谷さん


お客様の行動アルゴリズムに応じてのコミュニケーションタイムを大切にしています。
ただ、店舗での充実感も大事にしています。むしろ売り場はずっとアナログで良いと思っていて。
ITによって色々サポートをするわけですけど、店舗には店舗の新たな発見がありますから。
ネットをやってみて思うのは、お店での買い物は絶対に無くならないと感じます。
伝わり方はデジタルだけど、それを作っているのは「人」ですから、
伝わるものはアナログ的な思考なのだと思います。だからコミュニケーションでは、
どちらも共存することが良いと感じています。


***


前半では、奥谷さんが実際に感じてこられた思いや具体例をもとに
「現在」の無印良品マーケティングの仕組みや取り組みについて語られ、
あっという間に70分が経過...!


その後行われた質疑応答では、受講生のみなさんがそれぞれ抱いていた、疑問やクリアできない
モヤモヤなどを奥谷さんに投げかけ、それに対して奥谷さんも、丁寧に応答されていました。
レクチャー終了後も、奥谷さんと受講生のみなさんが直接お話しされたりなど、
なごやかな雰囲気が流れていました。みなさま、おつかれさまでした!
お越しいただき、どうもありがとうございました!


...そして!


「質疑アンケート(申込み時)」に質問をいただいた内容についても
奥谷さんよりお応えいただきましたので、ぜひご覧ください!
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【質疑アンケート】

1. 奥谷さんにとって、マーケティングとは一言で何でしょう。
必要悪ですね。マーケティングの定義としてドラッカーは「Selling(売ること)を不要にする」
なんて定義を昔出したことがありましたけど、私は矛盾しているように思います。
理想はなにもしなくても売れることですよね。でもそうはいかない。
だからマーケティングする。
でも必要悪だからといっていってもそこに如何に共創のコミュニケーションを作るか?
B(Business=企業) to C(Customer=お客様)の一方的なコミュニケーション、
マーケティングではなく、B with C なコミュニケーションしていくことが
マーケティングだと思います。企業のやっている正しい活動を正しく伝える。
そして、それがお客様に共感をもって受け入れられ、拡散する。
それがマーケティングの理想ですね。


2. たくさんあるプロジェクトを取りまわす為には、マネージャーの育成が必要かと思いますが、
 どのように育成し、日々の仕事や方向性の確認のしあいをなさってますでしょうか。

人材育成は課題ですね。私もそんなに人材育成ができている感じはありません。
私のマネジメントスタイルとして、毎朝9時から10時を使って日々参加する会議、
商談で得たアイデアをシェアするManager MTG(課長さん参加)をやってます。
それ以外の時間はなるべく部下を呼んで会議やMTGがしないようにしています。
いかにフレッシュにバイアスなく情報を渡すか?
そしてそれを自主的に考えてもらい実行してもらうか?
ちゃんと私が責任を取ってあげているか? それくらいしかできていないのが現状ですね。


3. 自宅はどれくらいの比率で無印商品を置いているのでしょうか。
結構ありますよ。ベッド、ソファー、ベッドカバー、布団、ダイニングテーブル、テレビ台、
洋服、靴下はすべて(MUJIの直角靴下)PP収納用品等など、30-40%くらいはMUJIかと思います。

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奥谷さん、どうもありがとうございました!


次回の「ビジネス」に関するレクチャーは、3月25日(水)!
Soup Stock Tokyoの株式会社スマイルズ ! !「やりたいことをやるというビジネスモデル 」

『Soup Stock Tokyo』『PASS THE BATON』を運営する
株式会社スマイルズ代表・遠山正道が講師です!
マーケティングにも、ITにも、資本主義にもたよらない、" やりたいこと " を主語にした
ビジネスモデルのあり方をレクチャーしていただきます。お楽しみに!


▼お申し込みはコチラ
http://peatix.com/event/74946

ヨガカフェ体験してみました!

JUNE 27, 2014 11:47 AM / CATEGORY:AFTお知らせ, AFT講義レポート, レポート

6月19日に開催されたヨガカフェに、今回はじめて参加してみました。
今回のテーマは「むくみ、怠さにアプローチ/楽健法」。

いまの季節に知っておきたい、むくみや怠さを軽減してくれる
ポーズを教えていただきました!


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楽健法は二人組になって行う動きで、
相手のからだを足で踏んでほぐすものです。


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受けている人は気持ちいいけれど、
する側は疲れてしまうというのが普通のマッサージ。

楽健法は踏まれている人だけでなく、踏んでいる人も足裏が刺激されて、
元気になるというのがよいところだそうで、
家族間のコミュニケーションにも役立つ知恵です。

ときどきスポーツジムなどのヨガクラスを受けることがありますが、
受けた後すっきりするクラスもあれば、
逆にぐったり疲れきってしまうクラスもあります。

ヨガカフェでは少しきつめのポーズを交えながらも、
体をほぐすような動きが多く、
ほどよく体を動かしたなあ、という心地よさが残りました。

先生によってクラスの組み立て方が違い、相性もあると思いますが、
これからヨガを始めてみたいという方は、
まずはヨガカフェを体験してみてはいかがでしょうか。

最後にノンカフェインのお茶とおやつをいただきながら、
先生とお話しする時間もほっとします。


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ヨガだけでなく、今回の楽健法などのマッサージや、手作業を取り入れる+αのレクチャーがあるのもお得感があります!

小さいお子さまがいらっしゃる方も参加できるのが、ヨガカフェの特徴のひとつ。


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次回は7月3日(木)「胸を広げる、呼吸法/食材で作る簡単石鹸作り」
申込受付中です!
http://artsfield.jp/lecture/000348.html


3331ささき

AFTシリーズ講義「アートのための英語塾」の今年最後の講座−アートマネージメントコース【海外プレス+プレスリリース】−

DECEMBER 26, 2011 11:23 AM / CATEGORY:AFT講義レポート

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今年最後の「アートのための英語塾」講座のテーマは、アートイベント・展覧会を開催する時の「プロモーション活動」の重要な要素「プレスリリース」。
これを考えさせるきっかけとして、この講座では、自身のアートプロジェクトや展覧会を開催するという前提に、各受講者がプレスリリースの発表を行いました。
様々な仕事をしている忙しい受講者にとっては、困難な宿題だったと思われますが、それでも多様なプレスリリースが発表されました。
次に、色々な例の屋内外プレスリリースを参照しながら、より効果的なプレスリリースの作り方についての論議。
一人の受講者が「広報担当や記者は一週間で山ほどのプレスリリースを受け取り、どうすれば自分のプレスリリースを目立たせることができるのか?」という質問に対して、幾つかのアドバイスが出ました。


・自分のイベントの最も強いappeal point (訴求点)を見つけて、簡明かつ面白く語ること
・送り先の機関・広報会社を事前に調べて、自身のイベントが他の取材されているものと当てはまるかどうか確認すること
・単なる展覧会ではなく、他の関連イベントや、他のイベントと関連付けたら、より強い魅力がある

等等。。様々なアドバイスを共有し合い、有意義なディスカッションでした。

講座の終わりに、3331メインギャラリーの展示「ポコラート全国公募展」を訪ね、印象に残った一つの作品についてそれぞれが3331 Arts Chiyoda Facebookの
英語ページに英語のコメントを足しました:
http://www.facebook.com/pages/3331-Arts-Chiyoda/120173754687495?ref=ts

英語で感想を書きながら、大田エマ講師の手作りフルーツケーキを食べて、有意義で楽しかった講座も最後となりました。

AFT「アートのための英語 塾」講師
ジェイミ・ハンフリーズ

AFT 「アートのための英語塾」のレポート

SEPTEMBER 4, 2011 3:06 PM / CATEGORY:AFT講義レポート, レポート, 日記

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8月28日にアートのための英語塾スポット講座「世界中で流行した国際展の価値とは?」を開催しました。ビエンナーレやトリエンナーレのような大規模の国際展について楽しく英語でいろいろと話し合いました。
ワームアップとして皆さんがこのキーワードと合わせて様々なイメージからひとつを選びました。ビジュアルでことばの意味についていろいろ考えました。
「Globalization」「Nationalism」「Capitalism」「Institutionalism」
「Locality/Site-specific」「Counter-culture」「Participatory」

その後ビエンナーレの歴史をチラッと紹介しました。世界で一番有名で歴史があるビエンナーレはヴェネツィア・ビエンナーレです。 1895年にスタートして、100年以上続いてきました。このビエンナーレではさまざまな国のパビリオンがあって、アーティストは自国の代表として発表します。このモデルが最近少し変わりましたが、他のビエンナーレもこのような仕組みを模倣してきました。

その後ビエンナーレの独特なモデルケースの例を挙げました。イギリスの「Liverpool Biennial」の特徴はキュレーターたちはチームとして動いて、計画の段階から長期間リヴァプールに住むことで街の人、街のコンテキストをより深く理解できます。

もうひとつのビエンナーレ、メキシコとアメリカとの境界線で行われた「inSite」も紹介しました。この場でいろいろな政治的、社会的な問題が起こっていますがこのイベントを通してアメリカ人とメキシコ人を融和させようとしています。作品はすべて公共空間におけるサイト・スペシフィックの作品で、その場の歴史的、社会的、経済的、文化的の特徴・問題を扱った作品が多いです。

この例を見てから皆でビエンナーレの役割についてディスカッションしました。最後にチームでビエンナーレを計画しようとしました!10分以内自分のビエンナーレの計画を立つということをチャレンジしてみました。驚くほど具体的な提案があって、「東京発電ビエンナーレ」が実現されたら面白いでしょう!

今週の日曜日(2011年9月4日)ではミャンマーのモ・サ氏はミャンマーのアートシーンと自分の活動についてプレゼンしますのでご興味ありましたら是非お越しください。

http://artsfield.jp/

【AFT講義レポート】「キュレーターの仕事2 アーティストと共につくり、発信する」講師:片岡真実(森美術館チーフ・キュレーター)

FEBRUARY 7, 2011 7:31 PM / CATEGORY:AFT講義レポート

◇講義開催日:2011年2月3日(木)

キュレーターはトリックスターであるべき

展覧会を企画し、アートシーンを引っ張っていくキューレーターという職業。
しかし、キュレーターとひとことで言っても、
専門分野、所属している施設によって
その仕事内容には違いがあります。

シリーズ2回目の講師は、
森美術館チーフ・キュレーターをつとめる片岡真実さん。
講義場所となったラウンジには片岡さんのお話を聞こうと
たくさんの生徒さんがいらっしゃいました。

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「今日はキュレーターという仕事が、一体どういったものなのかを
みなさんと一緒に考えていきたいと思います」

将来、キュレーターを目指しているという受講生も見られるなか、
いよいよ講義がスタートです。

まずはある書籍の一節が紹介されました。それは......
ルイス・ハイド(著)『トリックスターの系譜』

神話や物語に度々登場し、いたずら好きのキャラクターとして
描かれる"トリックスター"。
片岡さんは、キュレーターにはこのトリックスター的な要素が
求められると語ります。

「トリックスターは内と外といった境界を自在に行き来することができる存在。
インスティテューション(美術館所属)におけるキュレーティングには、
さまざまな二面性があります。大衆性と批評性、伝統・歴史と現代性・先端性......。
自分がどこに位置しているかを把握しながら、枠組みを越えた視点や創造力を
持つことも必要なんです」


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施設を維持していくためには、もちろん集客を無視することはできません。
一方で、大衆性とは離れた批評性のある企画も必要です。
そのため、展覧会作りは試行錯誤の連続なのだそう。


「展示をひとつ作る度に、"これが何かの答えになるかもしれない"と考えています。
会期が終了したあとはさまざまな反省要素に気づくこともありますが、
それを受けて次の企画を考えることができるんです」


いくつもの展覧会を積み重ねることは、ひとつの歴史を作ること。
片岡さんは、そこにインスティテューションの可能性を感じているそう。

しかし、国際展やアートフェアなど、作品を発表する場所や、
目にする場所は美術館以外にもどんどん増え続けています。
また、現代美術の作家もこの世界にはたくさん存在しています。
それらすべてを把握するのはおそらく至難の業......。
そんななかで、インスティテューションのキュレーターに求められる能力とは?

「キュレーターは料理人に似ているかもしれませんね。
"目の前にある素材をどうやってお客さまにおいしく食べていただくか?"
それを考える必要があります。
インスティテューションの場合は、会期中の来場者数も日々目に入って
きますから、反応をダイレクトに感じることができるんです。
同じ場所にいられるからこそ、さまざまなアプローチを試すこともできる。
その環境をいかし、境界線を自由に行き来できるトリックスター的な思考、
テーマや作家をセレクトして見せ方を考える編集能力が今まで以上に
求められてくると思います」


この後、片岡さんが手がけられた展覧会から
『笑い展』(2007年)、『アイ・ウェイ・ウェイ展』(2009年)、
『ネイチャー・センス展』(2010年)をピックアップして
企画立案の経緯や、参加作家についてお話していただきました。

あっという間に90分が経過し、
キュレーターの未来についての言葉で、講義は締めくくられました。


「キュレーターも、映画監督のようにいろんなタイプの人が活躍するようになれば、
見る側もこれまでとは違った見方ができる時代になると思います。
出品作家の名前に観客が興味を惹かれるのと同じように
"この企画は、○○さんだから行ってみようかな"と、キュレーターの名前で
興味を持つケースがあってもいいと思いますね」


確かに、記憶に残っている複数の展覧会を調べたら
同じキュレーターの方が手がけられていたりするんですよね。
片岡さんのおっしゃることにも納得です。

次回、2月10日(木)『キュレーターの仕事3 アーティストと共につくり、発信する』の講師は
インディペンデント・キュレーターとして活躍されている窪田研二さんです。
美術館に所属せず、フリーランスで活動するのがインディペンデント・キュレーター。
毎回異なる現場で仕事をするため、インスティテューションのキュレーターとは
また少し違った視点、アプローチが見えてくるはず!

10日(木)は『ポコラート全国公募展』の最終日でもあります。
講義前にゆっくり展覧会を楽しむのもおすすめです。
(受講のお申込はコチラから)


3331 小西七重

【AFT講義レポート】「編集長が語るムーブメントのつくり方 5」講師:上岡典彦(『花椿』編集長)

JANUARY 18, 2011 5:41 PM / CATEGORY:AFT講義レポート


◇講義開催日:2011年1月14日(金)


不景気を気にするよりも、流行を生み出そう


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これまで雑誌の編集長を講師にお迎えしていた
「編集長が語る ムーブメントのつくり方」ですが、
『花椿』は資生堂が発行する企業文化誌なので、
厳密に言うと雑誌ではありません。

しかし、1937年(昭和12年)の創刊以来、
常に新しい価値を創造するべく制作されてきた
『花椿』はファッション誌・カルチャー誌・アート誌・文芸誌の
要素を兼ね備え、一時は最大発行部数655万部という
とてつもない数字を記録しています。

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▲1924年に発行された『花椿』の前身『資生堂月報』も!

編集長の上岡さんは広報室勤務を経て、『花椿』編集長に就任。
講義では、資生堂が文化事業に取り組むまでの
経緯と歴史を紐解きながら、『花椿』が担ってきた
役割についてお話していただきました。

アートに興味のある方なら
銀座の資生堂ギャラリーをご存知かと思います。
ここは現存する日本最古のギャラリーであり、
「shiseido art egg」のように発表の場を求める
若手アーティストを支援する企画も行っていますが、
こうした活動の背景には明確な理由があります。

「創業者である福原有信が埋め込んだ企業文化の理念には、
 "文化も資本"という考えがあります。
 文化が経営に役立ち、経営が発展することにより
 新たな文化を生むことができる。ならば、人を管理する人事部、
 お金を管理する経理部、文化を管理する部署があるべきだと」

こうして、
資生堂ギャラリーの運営、『花椿』を制作している
"企業文化部"という部署が設立されたのです。

ここで1920年(大正9年)の新聞に掲載された
資生堂の広告が紹介されました。
そのなかに、こんな言葉が書かれていました。

「不景気のために、今年は流行品ができないということであります。
 しかし、私たちは今不景気を考えるより、
 流行を考えねばならぬ立場にあります」

1980年頃には、さまざまな企業がメセナ活動を積極的に行っていましたが
企業を取り巻く状況が変わると、経費削減などの理由から
メセナ事業から撤退していくことになります。
そんな状況のなか、なぜ資生堂はメセナ活動を続けることができたのでしょう?

「初代社長の福原信三は写真家としても活動し、
 パリに遊学していました。そして、パリで出会った画家を
 意匠部に招いたのです。
 しばらくすると、意匠部に招いた画家が"再びパリで絵を学びたい"と言う。
 そこで、福原信三はひとつの条件を出して留学費用を負担します。
 条件とは、"パリの最新の流行をレポートすること"でした。
 資生堂のメセナ活動は、ただお金を出すだけでなく、
 企業側も何かを得られるような仕組みにしています。
 だからこそ、続けられてきたのだと思います」

こうした姿勢は、アーティストとより良い関係を築くことにも
繋がっています。

2007年に資生堂ギャラリーで開催された
蔡國強の個展『時光 -蔡國強と資生堂』
作家との信頼関係があってこその展示。
蔡國強自身が命名した展覧会タイトルには
"会社の名前が出なくても、担当者が変わろうとも、
活動をサポートしてくれた資生堂との歳月を振り返ってみたい"という
想いが込められていたのです。

『花椿』の連載を担当している執筆陣が
他の媒体ではありえないほど豪華なのも
互いの信頼関係があってこそ。

新しい活動、価値観を生み出すことは
エネルギーを必要としますが、
それを維持していかなければ
人もモノも繋がっていきません。
資生堂の文化事業の歴史は
そんなことを教えてくれたように思います。


3331 小西七重

【AFT講義レポート】「編集長が語るムーブメントのつくり方2」講師:古川 誠(『OZ magazine』編集長)

NOVEMBER 11, 2010 11:02 PM / CATEGORY:AFT講義レポート

◇講義開催日:2010年11月11日(木)

専門誌にはできない"アート"のつたえ方

1987年6月に創刊され、来年25周年を迎える『OZ magazine』
出版業界では「雑誌が売れない」と嘆かれていますが、
順調に販売部数を伸ばしている媒体でもあります。

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2008年6月、月刊化にむけてリニューアルをした
『OZ magazine』の第一特集はアートでした。
アート専門誌も販売部数に頭を悩ませるなか、
同号は社内に在庫がなくなるほどの反響を呼び、
現在では年に1回の"アート特集"を楽しみにしている読者も少なくありません。

では、なぜ『OZ magazine』×アートは相性がいいのか?
古川編集長はこう話します。

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「『OZ magazine』では"もの"や"場所"を情報として伝えるだけでなく、
そこに潜む"物語"を伝えていきたいと考えているんですね。
そうしたことを知ることは、日常の繰り返しを肯定することでもあると
思うんですよ」

身のまわりにある"もの"を"もの"として捉えるのではなく、
その背景にある"物語を伝えるもの"として捉えることができたら
確かに、私たちのまわりにはワクワクが溢れているように思えます。

「日常を丁寧に」というコンセプトを持った『OZ magazine』。
アートの取り上げ方もやはり独自の手法がありました。

「専門誌があるなかで、アートを取り上げるのは勇気がいりました。
でも、最近のアートを見ていると"拝見するもの"から"体験するもの"に
変化しているように思えたんですよ。
それはつまり、物語を感じられるということ。
作品やアーティストのことを伝えるとともに、
展覧会を支えるボランティアスタッフなどの
"関わっている人たちの想い"も伝えたいんです。
もちろん、情報誌としてスタートした雑誌ですから、
実用性もきちんと兼ね備えていないといけません。
地元のスタッフの方からおいしいご飯屋さんを聞いたり、
おすすめのスポットを教えてもらったり、
この一冊を持ってその場所に行けるようにつくっています」

展覧会やアートイベントを支える人たちの数だけ、
そこには物語があるのです。
それが伝わることで、「このアーティストの作品が見たい!」という目的ではなく
「この物語がある土地に行きたい! 自分で感じたい!」という目的を持って
越後妻有の「大地の芸術祭」や、「瀬戸内国際芸術祭2010」に足を運んだ人も
少なくないはず。

『OZ magazine』は、専門誌にはできない手法で読者にアートへの入り口を
つくることに成功したと言えるのです。

ここでなんと「アート大特集」の8月号が受講者全員に
プレゼントされました!! これにはみなさん感激の様子。
受講生の目がキラキラと輝くなか、講義は続きます。

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続いては、サプライズゲストとして
同誌のカバー撮影を3年前からずっと担当している
写真家・川島小鳥さんが登場!
独特のやわらかい口調で、表紙撮影秘話を語っていただきました。
古川編集長もいつも悩んでしまうという、表紙候補になったプリントも
特別に公開していただき、雑誌制作の裏側も垣間見ることができました。

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あっという間に、90分が経過し、
いつもはシャイな受講生のみなさんですが
質疑応答でもバンバン質問が飛び交いました。

講義終了後も古川編集長を囲んで
みなさんいろんなお話をされていたようです。

次回の「編集長が語るムーブメントのつくり方 3」は11月20日(土)!
『美術手帖』編集長・岩淵貞哉さんが講師です!! 
そして12月3日(金)には『PAPER SKY』編集長であり、
ニーハイメディア・ジャパン代表のルーカス・B・Bさんも
登場です! お楽しみに!


3331 小西七重

【AFT講義レポート】「東京の仕掛人たち1」講師:小崎哲哉

OCTOBER 30, 2010 3:00 PM / CATEGORY:AFT講義レポート

3331のスクーリングプログラム『ARTS FIELD TOKYO』で開講されている「東京の仕掛人たち」。
小崎哲哉先生による講義で、様々な表現分野を支える「仕掛人たち」をゲストとして招聘し、東京的文化の特徴とは何かを徹底的に討論する内容です。

今回、講師の小崎哲哉先生が発行人兼編集長である『REALTOKYO』のHPで、「東京の仕掛人たち」1の記事が公開されました。
講義内容を凝縮たレポートが掲載されていますので、是非、ご覧ください。
http://www.realtokyo.co.jp/docs/ja/column/initiators/bn/initiators_001/

内容は、9月23日(木)に開講された「東京の仕掛人たち」1。
ゲストは、国際舞台芸術祭『フェスティバル/トーキョー』(F/T)プログラム・ディレクターの相馬千秋さんの回です。

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講義での先生やゲストの方のお話は舞台と似ている部分があります。
講義の現場での「間」や息づかいが聞こえる体験、またはその場の方々のみにお話することなど、参加することで得られるものは多いです。
是非AFTの講義に足をお運びいただき、講師とゲストの生の声をお聴きいただければと思います。


次回「東京の仕掛人たち」3のゲストは、森美術館チーフ・キュレーターの片岡真実さん。
2010年11月23日(火祝)17:15~18:45に開催いたします。

ご参加希望の方は、下記よりご予約いただけます。
http://artsfield.jp/lecture/000081.html

3331 佐々木浩一


【AFT講義レポート】「アートとマーケティング 2」講師:城多秀年

OCTOBER 28, 2010 9:33 PM / CATEGORY:AFT講義レポート


◇講義開催日:2010年10月14日(木)

はたして本当にアートはお金にならないのか?


"アートの持つ役割を考え、アートが持つ力をどうやって事業化するか?"というのが、この講義のテーマ。
2回目となる今回は、まず"お客さまの視点でアートを見たときの効果"について考えるところからスタート。

「食と旅行は人の興味を引くんですよ。
例えば、パリに旅行に行った人に"パリはどうでした?"と聞くと、
ほとんどの人が"いや〜、ルーヴルはね〜"と答える。施設に関する感想が多いんです。
これはつまり、旅行とアートが密接に関係しているということなんですよ」

確かに、ここ近年雑誌などでも"アート×旅"や"アート×散歩"という特集を目にする機会も増え、
反響も大きいのだとか。
(詳しくは11月11日(木)17:15〜19:45「編集長が語るムーブメントのつくり方 2」にて!)
続いて城多さんはグイグイと話の核心へ受講者を引っ張っていきます。


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「どうもアートの世界というのは、ニーズ(お客さまが求めるもの)に対して
シーズ(アートの持つ力を提供するもの)が弱すぎるんですね。
だから"アートはお金にならない"とよく言われます。
僕からすると、どうしてお金にしないの?という話です(笑)。
例えば、"お客さん100人を呼ぶために、あなたはどんなアプローチをしたの?"とたずねたら
"いや......チラシをまきました"と。いやいや、新宿の飲み屋じゃないんだからね(笑)」

それでは、アートの力を使って事業化することに成功した例はあるのでしょうか?

「ひとつの例として、長野県小布施町をご紹介しましょう。
ここを最初に訪れたときは、"小さな田舎町"という印象だったんですよ。
小布施町にある岩松院には立派な葛飾北斎の天井画があり、
北斎館には当時、年間3万4千人の入場者だったそうです。
3万と聞くとすごいと思うかもしれませんが、1日で考えると100人ですよ?
広い場所にポツポツとしか人がいない状態だったんです」

しかし、アメリカ人女性・セーラさんの事業成功により街は一変することに......。
彼女は焼酎ブームにおされて日陰になっていた日本酒に目をつけ、
木の樽で日本酒を作り、低迷していた売上を6倍にも伸ばしたそう。
さらに、街の中心部に雰囲気のあるレストランをオープンさせ、そのレストランに触発されて街全体の雰囲気も変化。
ついには大小合わせて12の美術館がオープンする街になったのです。


「美術館を作ったのは、そこにメリットがあったからです。
お客さまの目線に立てば、美術館はまずおみやげに困らない。
ポストカードのひとつでも立派なおみやげになるわけですから。
そして、サービスを提供する側からしても、美術館には人が長く滞在しますよね?
つまり、お客様の足を止めることができるんです。コレクションを飾るための美術館では、
これらの効果は期待できません。
なぜならまず前提として"人が来る"ための仕掛けがなければダメ。
小布施町の場合は、セーラさんが作った誰が見ても"おいしそう"な五感に訴える
日本酒をきっかけに、"その土地らしいもの"が街に生まれていったのです」

 "五感に訴える"これこそがアートの持つ、ほかのものにはない力。
城多さん曰く、五感を使って自分のなかに入ったものは決して忘れないのだとか。
だからこそ、日常から離れ、感覚が開放されている"旅"という状況がアートと結びつきやすいのですね。


「こういった話をしても、実行する人は少ないんです。
ただ、こういう話をするとデザイナーの方は喜びますね。
アーティストよりもビジネス感覚があるし、実際、ヒドイ目にもあっているし(笑)。
だって、お客さまのことをなんにも知らされないで"これ、作っといてね"なんて言われることもあるんですから」

城多さんが講義の終わりに言われた言葉は、ピリっと背筋が伸びる思いでした。
私たちにとって、お客さまとは3331 Arts Chiyoda に来館される方だったり、AFTの講義を受講される生徒さんです。きちんとニーズに合ったシーズを行えているのだろうか?と、スタッフ一同、教室の片隅でおのおの考えていたのでした。


<おまけ>

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講義終了後は1FのカフェFoodLabにて城多さんと受講生で、ビールを片手に白熱したトークが繰り広げられていました。
ビールトークの内容は......参加された方のお楽しみですが(笑)、講師の方と直接お話ができるのもまたAFTの魅力です。

3331 小西

【AFT講義レポート】「アートと空間の経済学/動くまちづくり 1」講師:清水義次

OCTOBER 13, 2010 6:40 PM / CATEGORY:AFT講義レポート

◇講義開催日:2010年9月10日(金)


明日から街を歩くのが楽しくなる!? 清水先生直伝、人間観察の極意

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空き物件を利用し、街全体をギャラリー化するイベントを2003年よりスタートさせた「CET(セントラル・イースト・トーキョー)」。その仕掛人がこの講義の講師、清水義次さんです。また、このARTS FIELD TOKYOがある旧練成中学校をリノベーションした「3331 Arts Chiyoda」のプロジェクトマネジメントも担当されました。
それまで誰も見向きもしなかった場所に小さなゆらぎを起こし、新しい付加価値を生み出していく清水さんの仕事。そこには、美術館やギャラリーを飛び出したアートに必要な要素がギュッと詰め込まれています。本講義では、自分たちが"ゆらぎ"を起こすために必要なことを学んでいきます。

まずは、アートが地域や社会と繋がり、それらを変えていくために大切なことを清水さんがレクチャー。

「まず必要なのは、地域資源を発掘、発見すること。アートという領域を踏み越えて、新たな関係性を持つためにはフィールドワークが必要不可欠なんです。完全な持ち込み型では地域資源を発掘、発見することはできないでしょう。次に、街の変化に敏感になること。変化は絶えず起きているものなんです。メディアで報道されたものを後追いするのではなく、いかに思考をフラットにして物事を見られるかが大切なんですよ」

実は清水さん、3331に来られたときも毎回社会風俗観察をしていたそうです。

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「例えば、この3331で人間観察をするだけでも社会風俗観察ができるんですよ。7月のイベントではなにかに集中して注目しようとする人が目立ったし、8月には"東京のなかでもこんな人たちが集まる場所があるの?"と新しい客層が見えはじめましたね。3331にはある種SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の一部が現実空間にあるという印象を受けました」


......なるほど。では、具体的にどうすれば街の変化に気づき、"ゆらぎ"のもととなるプロジェクトを生み出すことができるのでしょう?

<清水先生直伝、社会風俗観察の方法>

1 街を歩くときは、できるだけ違うコースを歩く
「毎日同じ風景を歩くというのは周囲を見ていないことと同じです。歩くコースを変えることで、情報が脳内に入ってきます。自分の頭を使わない限り、その土地のDNAを発見することなんてできないんですよ。ネットで得た情報でそれを得られることはまずありません」
2 観察するときは"ジベタリアン"になる
「昔いましたよね、ジベタリアン。あれは観察的に有利なんです。地べたに座ってじっと観察していると見えてくるものが違うんですよ。最初は恥ずかしいかもしれませんが、慣れてきます(笑)」
3 ファッションもさることながら、その街にいる人の顔も観察する
「歩き方、話し方、ご飯の食べ方など、その人の行動まで観察することで、何に関心を持っているかがわかってきます」
4 気になるお店を見つけたら、まずドアを開けてみること
「食べなくても買わなくても、空気を感じるだけならタダなんだから、どんなお店でどんなお客さんがいるのか自分の目で見て、感じないとね」

雑誌やテレビ、インターネットといったメディアから情報を受けることに慣れている私たちは、"自分の目で見て、感じて、分析する"という行為のトレーニングがまず必要なのです。
清水さんいわく、この社会風俗観察を2年続けると、おのずと"この街でこんなことをすればおもしろいのでは"という世の中を先読みする力がつくのだそう。

清水さんの講義を受けていると、すぐにでも街に出て社会風俗観察をはじめたくなりました。
次回の講義では、11月22日(月)より開催される「CET」にまつわる裏話も聞けるはず!
アートが街のコンテンツとなるためにはどのような"仕掛け"が必要なのか?
その場所に人を集めるためにはどのような"仕掛け"が必要なのか?
新しい"ゆらぎ"のつくり方をさまざまな方向から検証していきます。
お楽しみに!

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