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3331ギャラリーのリニュアルオープン第一弾。ファッションブランドSEMBLによる個展がオープン

MARCH 22, 2013 12:00 AM / CATEGORY:日記

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展覧会名「STORE ONE」が示す通り、その空間がギャラリーなのかセレクトショップなのか困惑する。
中を覗くと、空間内に貼られたシルクスクリーンのポスターや、今回のために制作されたコレクションのディスプレイが目にとまる。しかし、その空間に一歩足を踏み入れた瞬間に、目の前には段ボールで制作された巨大スカルが現れ、圧倒される。気がつけばスカルが着た巨大な白いシャツが空間全面に敷かれており、鑑賞者はその純白なシャツを自らの靴で踏みしめていることに気がつく。そして、スカルの回りには切られた髪が放置されている。DIYとロックとアートの匂いが混在する空間。"大人になってロン毛を切ったスカル"とも解釈できる、意味深な展示だ。

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乱雑な素材で制作されたDIY感たっぷりの棚には、段ボールをコラージュし、"商品としての機能性に欠けた"洋服たちが飾られている。もちろん、空間内の展示されたものはすべて販売している。

空間を埋め尽くすハンドメイドの洋服たちやプロダクト、テキスタイル作品、平面作品、立体作品などには、アート・音楽・文学・サブカルチャーとSEMBLがこよなく愛するさまざまな「美」に関する引用文がシルクスクリーンで刷られている。

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ギャラリーにいるスタッフたちが着ているユニフォームも、このインスタレーションの一部として機能している。グレーのパーカーの裏には、『ライ麦畑でつかまえて』(The Catcher in the Rye)から連想した、10代に描く理想と社会の現実の狭間で苦しむ心境が綴られた文章が刷られている。SEMBLに聞くと、今回の展示のテーマだという。

パンツに刷られた「FOREVER NO IS」の意味を聞くと、永遠のノイズならぬ「永遠にNO」というSEMBLのコンセプトだという。パーカーの下に着たシャツのデザインを見せてもらうと、そこには「CRASS」とシルク刷りが。CRASSといえば、70年代から80年代にかけてイギリスで活動した伝説的なパンク・バンド。「左翼でも右翼でもなく、アナーキストである」と第3の途を突き進み、シルクスクリーンでレコードを刷り続けたパンクにおけるDIY精神とインディーズレーベルの元祖となった真のアナーキスト/活動家の集団である。

鑑賞者が気づかないユニフォームの制作まで楽しむSEMBLの空間づくりは、ショップとしてもインスタレーションとしても十分な説得力と、遊び心を持ち合わせている。プロダクトの中には、フランスのシュルレアリストであるアンドレ・ブルトンの自伝小説「ナジャ」からの引用文「Beauty will be CONVULSIVE or it will not be at all.」(美は痙攣的なものだろう、それ以外にはないだろう)と印刷されているものも。そこには、ファッションにおいて服やショップは本来は「痙攣的な美」を追求する一つのメディアとして機能するべきではないかというメッセージが、オーディエンス、あるいは現在のファッションマーケットへ投げかけられているようにも思える。また、シルクスクリーン作品などのオリジナル作品が3,990円から購入できるところをみると、「難しく考えずに買ってくれ」といった前向きさも感じられる。

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Anjo、MAKIO、MAKIからなるSEMBLが、もしも70年代のイギリスで活動をしていたなら、もしかするとCRASSのように「ファッションは死んだ。消費者たちの安っぽい製品になっちまった」と歌っていたかもしれない。ぜひ、STORE ONEの空間に散りばれられた、数々の言葉たちに耳を傾けてほしい。

会期は4月14日まで。会期中にはワークショップも開催予定。詳細はウェブで近日公開予定。
http://www.3331.jp/schedule/001823.html

3331坂野

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