現在、Arts Chiyoda 3331では、「ムンタダス展『アジアン・プロトコル』」を開催しております。
スペイン出身で、現在はニューヨークを拠点に活動しているムンタダスは、それぞれの国の文化、言葉の解釈や翻訳をめぐって浮上するさまざまな制度や概念、そしてそこに生じる相違点に着目した作品を発表し続けています。
その作品は、文字や出版物をはじめ、映像、写真、音声など多様なメディアを用いたインスタレーションです。
今回、Arts Chiyoda 3331で開催されているムンタダス展は、開幕とともに今アジアで見るべき展覧会10にも選ばれています。
http://hk.blouinartinfo.com/news/story/1344319/top-10-exhibitions-in-asia-in-march-2016
Blackboard Dialog: Redefining Asian Protocols,2015-2016 /3331 Arts Chiyoda, 2016
Photographer: Keizo Kioku ©Muntadas
白く広い空間に、展示作品は8タイトル。
それぞれの展示に、多くの解説文はありません。
それは、インスタレーションの中に立ち、それを見た時に鑑賞者が「考え、感じる」ことが展覧会で観るべき「作品」であり、多くを説明しないのは、ムンタダスの作り上げた作品には「答えがない」からではないでしょうか。
中でも、来場者のみなさんが考えてしまう作品が、《On Translation:Pills》。
On Translation :Pills (2006-2014)
茶色い薬瓶の中に、それぞれ違った分量の薬が入っています。
整然と並ぶ薬瓶のラベルには「条約」「生態学、エコロジー」「軍隊」など、日本語・中国語・韓国語の3カ国語で書かれたラベルが貼ってあります。
ムンタダスは展示の時に、それぞれの言葉の瓶にいれる薬の分量を慎重に調整していました。
分量はどんな意味があるのか尋ねても、「それは、教えないよ」とだけ答えたそうです。
来場者の方達は、それぞれに、
これらの言葉を3カ国で理解し合うのに必要な薬の分量なのでは?
これらの言葉の問題を解決するために、これだけ薬を飲んで分量が減ったということでは?
など、それぞれに感じたことを話されていました。
こんな風に、3つの国の関係に思考を巡らせることこそ、ムンタダスの意図する作品のあり方なのでしょう。
美術作品を鑑賞する時に、作家に関する情報や美術史的な図像学の知識があると、その作品を何倍も深く鑑賞できるのは事実です。
しかし、現代美術は、今を生きている私たち自身とどこかつながっています。
特別な知識がなくても、その作品の前に立った時に考えたこと・感じたことがそれぞれの答えであり、鑑賞方法も人ぞれぞれ。自由です。
ムンタダス展も、残り1週間となりました。
国際的な評価も高い、現代美術の巨匠 アントニ・ムンタダスの展覧会にぜひご来場ください。
ムンタダス展 アジアン・プロトコル
会期/2016年3月20日(日)〜4月17日(日)
時間/12:00〜19:00 入館は閉場の30分前まで
休廊/会期中無休
http://am.3331.jp/
Arts Chiyoda 3331
伊多波